Coccole C100 木製椅子 デザインストーリー|商業施設のフードコートやカフェに使える強さの秘密とは?
木の温もりに魅力を感じるけど、完全木製の家具は強度に不安があるのでは?そんなふうに感じる方も少なくないようです。
特にフードコート、カフェ、レストラン、またはホテルなどの商業施設のインテリアとしては、完全木製の家具は少し頼りなく感じられるかもしれません。
Coccoleの新作チェア「C100」では無駄を排したシンプルで軽やかなデザインを犠牲にすることなく、長期間に渡り多くの人に気兼ねなく使ってもらえる耐久性を実現しました。
そのデザインの成り立ちや秘密を、プロダクトデザイナー 木本さんに語ってもらいました。
Coccoleの新作チェア「C100」が目指した、譲れないポイントとは?
C100はKINOSHITAの主要ブランドの一つであるCoccoleの 2024 新作チェアとしてデザインされました。
Coccoleでは“都市と自然をつなぐ場所”をコンセプトに、カフェライクなデザインの家具をシリーズ展開しています。豊かな自然の中で感じるような「心地よさ」や「安らぎ」を中心に据え、ゆっくりとした特別な時間を過ごしていただく、というのがこのシリーズのテーマと言えるかもしれません。
C100をデザインする上で想定している使用シーンはフードコートやカフェ、レストランなど、どちらかというと都市的な性格を持つ施設です。そのような場所でもナチュラルなぬくもりや表情を持つ家具を配置することによって、周囲の都市生活の雰囲気とは趣の異なる空間が生まれるようなデザインを心がけました。
フードコートのように不特定多数の人が長時間使用する商業施設の家具は「ハードユース」とも呼ばれます。つまり人を惹きつけるデザインだけでなく、いろんな人にガンガン使ってもらえる特別な頑丈さも必要なんです。むしろ「強度」こそがこのチェアの最も譲れないポイントだったと言ってもいいかもしれません。この点を掘り下げてご説明したいと思います。
ビーチ材のポテンシャルを引き出す軽やかなデザイン
まずC100では“都市と自然をつなぐ場所”というブランドコンセプトの要求に応えるため、構成材としてビーチ材を選びました。ビーチ材は穏やかな木目と木肌の美しさが特徴です。
ビーチ材は北欧家具やミッドセンチュリーデザインなどでも愛用されていて、モダンな感性を持つ人を含め、多くの人々にとって馴染みがあって、親しみを感じやすい素材でもあると思います。
C100は張り地やクッションを採用していない完全木製チェアです。
板材そのままの座り心地だと硬すぎるので、ビーチ材だけで座り心地のよさを感じてもらえるよう、背もたれと座面を曲げ加工で仕上げています。特に座面は座る人の身体のラインに寄り添うように考え抜かれた、幅・奥行きの2方向に有機的な曲線を描くデザインとしました。加工性がよく、このような難しい曲面加工が導入しやすいというのもビーチ材の利点のひとつですね。
体のラインに合わせた曲面加工に加え、背もたれと座面の傾斜角度においても座りやすさを追求しました。この工夫により座る人の体圧が自然に分散します。クッション無しでもお尻や背中が痛くなりにくいので、食事やコーヒーやおしゃべりをゆっくりと楽しんでいただけるはずです。
また、フードコートではかなりの台数のチェアを規則的に配置するコーディネートとなることが多いです。そのようなインテリア環境でも軽やかな印象になるよう背もたれは極力薄くし、目につきにくい座枠の下端部分も面取りするなど、細部に至るまで思考を巡らせました。
座面前方の垂れ下がり部分のなめらかな見た目も含めて、ユニークでフレンドリーなフォルムに仕上がったと思います。
フードコートのような商業施設の使用環境にも応える頑丈さの秘密とは?
最初にもお伝えしたように、フードコートのようなハードユースを想定した家具の場合、一般家庭向けの家具にはない強度設計が必要になります。
ビーチ材は素材としての強度は十分。さらに椅子としての強度を出すため、C100では素材同士を繋ぐ部分、つまり「継ぎ手」に工夫を凝らしました。
椅子で特に大きな負荷がかかるのは脚と座枠(座面を下から支える木枠部分)です。C100では、この部分の継ぎ手を「ダボホゾ構造」とすることにより、ワンランク上の耐久性を持たせています。
この構造は、差し込まれるホゾ部分をダボが貫通するように継ぐ、いわばダボ継ぎとホゾ継ぎを組み合わせたハイブリッドな構造になっています。これは「ダボホゾ構造」や「貫通ホゾ構造」などと呼ばれます。
通常の「ホゾ継ぎ」だけだとホゾを引き抜くように働く引張力に弱くなります。実は椅子を引いたり押したりする時にかかるこの引張力という負荷で多くの椅子は故障してしまうんです。ダボがホゾを食い止めるように打ち込まれるダボホゾ構造では、そのような故障はほとんど起こりません。
さらにKINOSHITAでは幕板を太くし、ダボを3つの設計としました。ダボは通常1カ所あたり2つが主流なので、かなり高い耐久性になっています。
このダボホゾ構造とビーチ材本来の高耐久性のおかげで、C100は軽やかな見た目と、コントラクト向けの非常に高い耐久性を実現しました。
製造工程でも素材を無駄にしない、サステナブルなアイデア
Coccoleのブランドコンセプトに従い、C100ではサステナビリティにも配慮しました。
これは主に製造分野の話になりますが、家具作りの最初に行う大切な工程のひとつに「木取り」という作業があります。
これは使用する大型の木材からどこをどう切り出して家具のパーツにするかを決めていく作業です。この時、木目が美しく欠陥のない部分をメインのパーツに使えるように切り出します。木材の質が悪ければ家具に使えるパーツを効率よく切り出せず、無駄が多くなってしまうんですが、実は良質な木材でもパーツとして使えるのは50〜60%ほどといわれています。
KINOSHITAでは木材をできる限り効率よく使えるよう、流通する木材規格からパーツの寸法を逆算して設計することもあります。
このような工夫は、持続可能な循環社会のために資源を有効活用することに加えて、販売価格を抑えられるというメリットにもなります。
C100のカラーバリエーションと、デザイナー目線のコーディネートのコツ
カラーバリエーションを豊富に展開しているのも、C100の魅力の一つです。
中でもイチオシのカラーはクリア(CL)。マットなトップコートが明るい風合いがステキなビーチ材の魅力を存分に引き出してくれます。もちろん、他のカラーにもそれぞれにポップだったりシックだったりといった個性があり、あらゆるインテリアにご活用いただけるはずです。
C100の塗装色はご希望に合わせカタログ掲載以外のカラーにも対応しています。たとえばコーポレートカラーで塗装してオフィスのカフェテラスや社員食堂にコーディネートするといった方法もおすすめです。
オーク材のナチュラルな木目が美しいカフェテーブルCT04やCT40などと合わせると、より自然の美しさや生命力が感じられるコーディネートになると思います。、ぜひさまざまなシーンでの使用を幅広くイメージしていただきたいです。
▼C100とCT40のコーディネート一例
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- 最終更新
- 2024.10.10