ABORD W013 ラウンジチェア デザインストーリー|「グリッド感」で上質な非日常を醸す椅子
ホテルライクなコントラクト家具ブランドABORDの新作チェア「W013」は八角形をモチーフにしたユニークなフォルムが特徴的です。
特徴的なフォルムのW013を、ホテルやラウンジといった「高品質なもてなし」が求められるインテリア空間に調和するように仕上げるのは簡単ではなかったそうです。
個性的でありながらインテリア空間の統一感・調和を崩すことなく溶け込むW013のデザインはどのように出来上がったのか、プロダクトデザイナー 田原さんに語ってもらいました。
ABORDのブランドコンセプト「上質」「非日常」とW013
「上質な空間でのもてなし」がABORDの主要なコンセプトです。
この「上質な空間」をわたしは「洗練されたモダンデザインの空間」と位置付けています。その洗練された空間で特別な時間、つまり「非日常」を味わっていただきたいというのがW013のデザインのベースになっています。
ABORDにおけるモダンとは、余分な装飾性を削ぎ落としながらシンプルさを追求したデザインだと考えていますが、シンプル過ぎれば家具はチープな印象になってしまうのが難しいところです。
そうならないように、W013ではディテールとバランスの検討・検証を繰り返して得た答えを、椅子というプロダクトの中に組み込んでいきました。
たとえばディテールに関しては、W013のデザインにおいて見える部分の木製パーツはごくわずかですが、ここにオーク材を採用しています。
家具では加工性や価格面のメリットからビーチ材が使われることが多いんですが、ビーチ材は木の表面が均一で綺麗に仕上がる反面、木としての表情がやや乏しく感じられることがあるんです。
そこで、木のナチュラルで温かみのある質感や表情がより感じられるオーク材を使用する事にしました。細部にもグレードの高さや品格を持たせるのが狙いです。インテリア全般においてもオーク材の人気が継続しているというトレンドも考慮にいれました。
バランスに関していうと、W013は八角形という特徴的なフォルムを採用しています。ホテルやラウンジなどでの使用を想定とした家具としては、八角形はやや珍しいモチーフです。インテリア空間の中で浮かないよう、八角形で“優れたバランスを持つ椅子”をデザインするのは、やはり難しさを感じました。
W013はラウンド型の「W014」やスクエア型の「W015」と組になるABORDのチェアシリーズの内のひとつとしてデザインしました。このシリーズ間での部材寸法を可能な限り共通させることで、さまざまな形状を組み合わせる楽しみを確保しつつ、バランス感が崩れないように工夫しています。
このようなディテール・バランス面でのこだわりが、ハイエンドな空間の要求に応えられるデザインに繋がっているんです。
デザイナーとして考える「モダンさ」の反映
多くの人が納得するモダンデザインのためには、インテリアや建築の現代的なトレンドも汲み取らなければなりません。
そのためにW013をデザインする上で意識したのは「グリッド感」です。
グリッド・デザインやグリッド・レイアウトとはWEBデザインや印刷物などの分野でよく使われる言葉ですが、建築やインテリアなどにおいても「グリッド感」はひとつのトレンドになっていると思います。
グリッド感とは、規則正しく整然として、安心感・安定感のある美しさ、と表現できるかもしれません。特に国内において木材を使用したグリッド感あるデザインは「日本らしさ」にも繋がる部分もあるかと思います。
つまりグリッド感はインバウンド客に居心地の良さも日本らしさも感じてもらえるデザイン手法だと言えるかもしれません。それで、W013はトレンド感のあるホテルやラウンジに導入しやすいように、現代的なグリッド感を意識してデザインしました。
W013のデザインでもうひとつコンセプトに据えたのが「カラム」というキーワードです。これは「段組み」という意味で、これもWEBサイトや文章のレイアウトに関連して使われる言葉です。
先述の通りW013はラウンド型のW014やスクエア型のW015と合わせて一つのシリーズになっています。
バラエティに富んだ家具を、「カラム」に配置するように空間にはめこんでいくようなコーディネートをイメージしました。丸・四角・八角形と異なるモチーフの家具にシリーズとしての統一感やバランスを生み出すのにはなかなか苦労しましたが、きちんとした答えを出せたと感じています。
▼W013(ポリゴン型)
▼W014(ラウンド型)
▼W015(スクエア型)
W013に座る人が非日常を感じられるように
椅子の外観だけでなく座り心地においても非日常感を感じてほしいので、W013では快適さのための構造にもかなり気を配っています。
まずクッションの下部に隠れる部分には「ダイメトロール」という緩衝材を張り、その上に十分な厚みのあるクッションを配置しています。この組み合わせにより底突き感が無く、沈み込み過ぎず、体圧が吸い込まれるように分散する快適な座り心地になっています。
背もたれにある大きめのフェザークッションも、フワッと身体に馴染むような座り心地を提供します。実はこのクッションで隠れる部分のフレームにも、背当たりをよくするための面取りがしてあります。
▼背あたりをよくする面取り
このように座る人の視界には入らない部分にも、非日常を感じられる座り心地のためのさまざまな工夫を凝らしてあるんです。
さらに、サイズ感にも現代のニーズに合わせた工夫がしてあります。
W013をホテル用家具に限定しているわけではないですが、サイズ感に関しては近年のインバウンド需要に配慮し、日本人ジャストのサイズ感ではなく少しゆったりしたサイズの商品を意識的に開発しました。
大柄な外国の方には窮屈さを与えず、小柄な日本の方にはゆったりしたサイズである事で普段とは違う「非日常感」にも繋がるのではと考えています。
W013の強度、そして安定供給のための工夫
コントラクト空間向けの家具として、もちろん強度もハイレベルでなくてはなりません。
張込みタイプのラウンジチェアなので骨組みはほとんど張り地に隠れていますが、見えない部分でしっかりと木枠組みをして、十分な強度・耐久性を担保できる設計にしてあります。
またW013はまず全体をいくつかのパーツに分け、パーツごとのフレームを作成し、張り地を張ってから最終的な組立を行う設計としました。
この方法で製造すると、張り地の細かなディティールを崩すことなく、強度を担保することができるんです。ホテルのラウンジやロビーなど不特定多数が利用することを想定しているので、張り地の耐摩耗性や、クリーニングのしやすさなどの機能性にも気を配っています。
生産に関しては近年独特の大変さもありました。価格の高騰が落ち着く気配のない中で、特に高騰しているオーク材を使用していますので。
そんな中でもW013ではオークを仕上げ材とする箇所を最小限にする事で、チェアのボリュームに対しては価格面での影響も比較的抑えられているかなと思います。高騰しているのは木材だけではないので、製造メーカーとしては厳しい状況ですね。
それでも、KINOSHITAでは自社工場で生産と在庫管理を行えるという強みを活かせていると思います。
自社工場で、木工、塗装、張りという一連の工程をシームレスに行えるので、まず無塗装の木地の状態でフレームを一定数組んでストックしておくことができます。そのようにして別色オーダーへの素早い対応や、在庫量を最小限に抑えるなどの工夫ができるんです。これはコスト削減と素早い発送を両立する上でけっこう重要なポイントかもしれません。
実はコントラクト家具では自社工場を持つメーカーは少ないんです。製造業にとっては厳しい物価状況が続く中、KINOSHITAの生産体制はお客さまのざまざまなご要望に細やかな対応をする上での強みになっていると感じています。
デザイナーとしておすすめしたい、W013のコーディネート
W013は「上質な空間でのもてなし」や「非日常」を存分に楽しんでいただけるようにデザインしています。ロビーやラウンジなど、利用する人に特別なおもてなしを感じてほしい場所、また空間の顔になるようなシーンで活用していただけると嬉しいです。
W013単体でも、様々な組み合わせのレイアウトが可能なのでシーンに合わせて自由な発想で活用していただけます。また、同シリーズのラインアップW014・W015も取り込んで、インテリア空間の統一感を損なうことなく、上質な変化とリズムを生み出すコーディネートを楽しんでいただきたいです。
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- 最終更新
- 2024.10.10